あしたの鉄人

戦々恐々の日々

2016-05-01から1ヶ月間の記事一覧

小雨の中 1

通院の日は、今月も雨が降っていた。 診断が終わり、来月からの投薬量を決めると毎月、主治医と他愛もない話をする。「お休みとれないんやったら、奥さんに区役所に行ってもらえばいいじゃないですか」 主治医が言う通り、早急に区役所に書類を提出する必要…

昇りくる太陽

暑くなった所為か、仕事終わりの電車の中で僕は酷く疲れていた。 もう何も考えられないくらい疲弊し、自分の中の、何かが確実に磨り減ってゆく。 あと一駅で最寄りの駅だ。 一刻も早く家に帰りたいと思う反面、こうやって呆けながら、電車にもう少し揺られて…

あの頃の梅雨明け 2

夜が更けていた。 女子短期大学の紫陽花寮は、僕達が集団生活を送る寮から徒歩五、六分の所にあった。 酒の勢いと、その場に発生したわけのわからないエネルギーに引き摺られて、紫陽花寮へ今から行こうと言う事になった。 こんな夜更けにそこに行ってどうな…

あの頃の梅雨明け 1

大学一回生の頃、僕は大学の敷地内に建つ古い寮に住んでいた。 この寮は台所も風呂もトイレも共同で、一人に与えられる空間がわずかに三畳程度と言うまるで刑務所の様な建物だった。 寮費が月に一万円。実家があまり裕福ではない学生や遠征費が嵩む運動部の…

沢木

夕刻から沢木耕太郎が書いた本を何冊か読んでいるうちに強い焦燥感に駆られた。 こうしてはいられない。 自分の胸のうちに広がってゆく青臭い感情に辟易しながらも、まだまだこう言う感情こそが僕にとっては必要やないんかなとも思う。 少し前から小説の真似…